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東京高等裁判所 昭和34年(ラ)327号 決定

抗告人 羅鳳在

訴訟代理人 山本政喜 外二名

相手方 保土ケ谷ゴム工業株式会社

主文

本件抗告を却下する

理由

まず本件抗告が適法であるかどうかについて判断するに、原決定は、さきに抗告人の申請に基いて横浜地方裁判所がなした仮処分決定(同庁昭和三十四年(ヨ)第二一〇号事件)に対し、相手方が異議を申し立てると同時に、その執行の停止の申立をしたところ、原裁判所は、右申立を理由ありと認め、民事訴訟法第五百十二条第一項の規定を準用し、右異議事件の判決あるまで、右仮処分決定の執行の停止を命じたものである。しかるに右条項による裁判に対しては、裁判所が申立を不適法として却下した場合を除いては(大審院第三民事部大正十年三月九日決定)、不服を申し立てることができないことは、同条第二項、第五百条第三項の定めるところである。

抗告人は、本件については、仮処分決定の執行の停止を許すべき要件が存在しないのに、原裁判所が誤つてこれありとしてなしたものであるから、第五百条第三項の規定の準用はないと主張するが、本件はさきにも見たように、原裁判所が申立の実質について審査をなした上、これを理由ありとしてなした仮の処分であつて、このような一時的応急的な仮の処分に関する判断は、その審級限りとし、これに対しては、抗告を申立て、更にその当否についての争をせしめないのが前記法条の法意であつて、このことは停止決定が仮処分決定の執行についてなされたと否とによつて異るものとは解されないから、右抗告人の主張は、これを採ることができない。

してみれば本件抗告は不適法として却下を免れないものであるから、主文のとおり決定した。

(裁判長判事 内田護文 判事 原増司 判事 入山実)

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